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第991話 〜2003/4/24〜

■ガリ版

 印刷技術というのは、子供にとってとても魅力的なものの一つである。自分が書いた文字や絵が次々と同じ形のままで繰り出されるのは圧巻である。幼稚園のとき、教室で先生が鉄筆でガリガリとガリを切っていた。「先生、何しているの?」と聞くと、「プリントを作っている」と答える。数時間後に帰るときにそのプリントが手渡された。漢字は読めないが、紛れもなく、ガリガリとさっき先生がやっていたものだ。「ああやって、ガリガリしたものが印刷されるんだ」、と分かった。

 小学校も低学年までは例のガリ切り、ガリ版原紙での印刷だった。それが高学年になった頃から、ボールペン原紙になった。仰々しい、ヤスリの付いた下敷きや鉄筆も不要。普通の下敷きとボールペンさえあれば印刷原稿ができる。これにより、かつては壁新聞スタイルの学級新聞も5年生からボールペン原紙を使用した輪転機による印刷媒体に飛躍した。クラス全員に手渡される。もちろん、私はずっと新聞係をやった。間違った箇所には修正液を塗って、そおっと、息を吹いてみる。さっきボールペンで穴をあけた部分がふさがる。6年生の時の卒業文集もこのボールペン原紙を使用して作った。

 やがて中学生になった頃には新たに光によって原紙を穿孔させる仕組みが登場していた。黒鉛に反応するようで、鉛筆で書いたものか、複写機でコピーしたものを下原稿にし、光を当てて印刷原稿を作る。イラストなどを鉛筆で書いたり、他の媒体から切り取ったものを使用したりと、文字だけでなく表現力が格段に豊かになった。やがて大学に入った頃に複写機が身近なものとなり、あらゆるものが複写できる(白黒だけど)機械は重宝した。

 そしてワープロを使うようになって、印刷媒体はより身近になり、しかも活字使用という技術まで同時に手に入れた。活字になってみると、自分の文章も立派に見えてくるから不思議だ。そしてインターネット。自分が書いた(うった)文章などが電子的に画面表示され、あるときは印刷される。その魅力はかつてのガリ版やボールペン原紙での輪転機による印刷と根本は同じような気がする。

(秀)


第992話 〜2003/4/25〜

■横浜銀蠅

 私の記憶が確かだったら、横浜銀蠅が世間一般に知れ渡るようになったのは昭和55年のことだったと思う。私はそのとき中学2年生だった。どうしてその姿が格好良いのか私には理解できなかった。そして単調なコード進行で進む楽曲にも魅力を感じなかったし、そもそも歌詞がコミックソングだ。「ツッパリハイスクールロックンロール」。

 それなのに世間的には結構受けた。特にツッパリの層に共鳴感を与えたようだ。頭悪いくせに、わざと画数が多くて複雑、しかも忌み嫌うような漢字を用いて言葉を書き記すことも流行った。「夜露死苦」、「愛羅武勇」など。「かっとび」や「ロックンロール」という当て字もあったようだが、そこまでは記憶していない。

 そう言えば、銀蠅ファミリーなるものも登場した。嶋大輔に弟分の「紅麗威甦(グリース)」、それに全然キャラが違う妹分の岩井小百合。そして今となってはその名前すら思い出せないが、ソロの女性でツッパリスタイル(レディース)の歌手もいた。これは記憶していない人の方がきっと多いと思うほど売れなかった。

 さて、本家銀蠅である。翔、三度目の覚醒剤による逮捕。一回目は不起訴、二回目は実刑。そして三度目である。不良を標榜しながら実は兄貴分として、ファンに説教などをたれていたが、結局のところ、やっぱりあいつは半端もんでしかなかった。最初覚醒剤で挙げられたときから、世間は「やっぱりねー」という反応をしてきた。そして三度目。報道の度に、存在が再確認されるが、不良のカリスマはやはり不良だった、という駄目押しに懐かしさ以上の哀れみを感じる。

(秀)


第993話 〜2003/4/28〜

■恨みの建造物再び

 統一地方選挙の後半戦もついに終わった。もっとも身近な選挙として、一部では血縁、地縁を巻き込んだ旧態依然の選挙戦が繰り広げられたところもあったことだろう。無投票というのだけは何とかして欲しいなあ。無党派層に迎合して、政党の支持を取り付けずに選挙を戦う候補者が多かったのも今統一地方選挙での特徴の一つと言えよう。それは有権者の政治離れの一過程であり、それに迎合していると全体での平均投票率が50%を切る日がくるのが早まりそうな気がしてならない。

 さて、後半戦の中での注目はやはり滋賀県豊郷町の町長選挙だったろう。リコールにより失職していた前町長がからくも再選を果たした。次点者との票差はわずか55票差。先のリコール投票で勝利していたため、小学校保存を訴える町民側からの対立候補者の方が有利かと思われたが、この陣営が分裂し候補者が2名立候補する形で前町長を勝たせる結果となってしまった。

 選挙戦は反前町長を掲げる前町議と元町長に、前町長が加わり3名の戦いであった。反前町長派の一本化さえできていれば、反前町長派が勝てていた選挙だった。前町長にしてみればまさに漁夫の利である。この元町長というのが曲者である。よほど前回の選挙での敗退が悔しかったか。反前町長の世論を感じて校舎改築問題を舞台にかつての政敵として町民の支持を取り付けようとしたのであろう。

 しかし、そこには大きな誤算があった。元町長の獲得した票数は当選者のわずか8分の1程度でしかない。当選するには足りないが、それでも当選を邪魔するには十分な票数だった。結局のところ、かの有名校舎は政争のための道具に使われたに過ぎない。校舎改築の是非ではなく、反前町長として結束し、前町長を葬り去るためのシンボルとして利用しただけではなかったのか。そして最後は分裂、こんな選挙結果。

 一連の動きを振り返ってみる。得をしたのは誰か?。強いていえば再選を果たした町長だろうが、この間失職したりとその苦労を考えると得をしたは言い難い。では損をしたのは誰か?。一番は反前町長派に担ぎ出されて選挙に負けた前町議だろう。立候補に際して、町議の座を捨てている。校長や教育長のみならず、更なる不幸を招いた、まさに恨みの建造物。

(秀)


第994話 〜2003/4/30〜

■白い奴ら

 このコラムで時事問題というか、三面記事的なものを扱う場合は、独自の視点から主張を展開してみるか、いずれ時間が経って読み返し、「ああ、あの頃はこんな事件があったんだなあ〜」と思い出すときに、その記憶をより確実にするために書き記しておくことを目的にしている。今回は明らかに後者だ。独自の主張なんてありっこない。あの白い奴らは明らかに異様で変だ。文字通りの「電波系」。

 「パルウェーブ研究所」なる異様な白装束の団体が岐阜県の林道を占拠しているとマスコミが報道している。「スカラー波」という電磁波から身を守るために白い装束に身を包み、車には目の検査のときの測定模様の「C」という文字を幾重にも交互に重ねたようなデザインのマークがボディはもちろん、フロントガラスにまで貼り巡らされている。ボディカラーはもちろん白だ。

 当初、取材拒否の立場を取っていた理由を「共産ゲリラが電磁波を利用した兵器で狙っているから」とようやくマスコミに対して語り始めた。我々の想像を絶するような高度な技術で電磁波を使用して攻撃してくるらしい。それほど高度な技術を持っているのなら、林道に隠れていようとも楽々と見つけてしまうだろう。あんな白い装束の目立つ格好で、しかも団体で動いていたら。

 高度な技術に対抗するにはあまりにもお粗末な限りだ。あの白い布には電磁波防御には何の効果もないらしい。そもそも彼らが唱える「スカラー波」自体、静電気のことだというではないか。そこまで電磁波を憂えるのなら山になんかこもっていないで、街に出てマナーの悪い携帯電話を怪しい雰囲気で取り締まってもらいたいものだ。電車に白装束で反射板を持った奴らだ団体で乗り込んで来たら、人々のメールを打つ手もきっと止まってしまうことだろう。

(秀)


第995話 〜2003/5/1〜

■マクドナルドの新戦略?

 ここにきて、日本マクドナルド社の戦略がどうも分かりにくい。デフレ傾向を先読みし、値下げに転じ、シェアを拡大したのは良かったが、ハンバーガーを59円にまで値下げする必要がそもそもあったのだろうか?。既に他の競合相手はこの価格競争について来れなくなってしまっている。競合力としては80円でも、100円でも十分だったはずだ。確かに価格を安くした方が販売個数は増えるだろう。しかし、全体で考えた場合の収益は59円よりも高めに設定した方が良かったのではなかろうか。

 ただ、さすがのマクドナルドでさえも、いつもまでも安売り戦略では持ちこたえられなくなってしまった。そしてチーズバーガーが120円になる。この値付け自体は至って普通であるし、まだ安目かもしれない。しかし、ハンバーガーとの価格差から見れば、「チーズ1枚が61円かよ?!」ってことになる。そしてハンバーガーは確かに安いが他のバーガーやそのセットとなるとそれほど安いわけでもないことに気が付く。

 そしてここにきて、「プレミアムマック」なるハンバーガーが登場した。見た目は贅沢なチーズバーガーだ。ミートパティが2倍になっているらしい。値段は270円。ビックマック(250円)よりも高いことになる。ミートパティ自体も美味くなっているのだろう。本来なら、他のハンバーガーで使用しているミートパティもこれに改め、「今までよりもおいしくなりました」とやるべきだあろう。しかしそれにはコストアップによる値上げが避けられないことになる。

 例え美味くなっても、値上げしては客数が減ると思って別ラインの、しかも贅沢なハンバーガーと位置付けたのだろう。一旦肉の品質を上げてしまうと客が減ったからといって値下げのために肉質を落とすのは難しい。贅沢バーガーが売れなかったら、そのバーガーだけ販売を停止すれば良い。企業としては当たり前の選択だが、何とも腹の据わらない、この中途半端加減が気に入らない。新経営陣の迷いがあるのか。一連のこの新製品シリーズは数ヶ月の後に消えてしまうと私は予想した。

(秀)


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