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第211話 〜2000/2/29〜

■ちゃぶ台

 会社の昼休みにタクシーで品川まで行って、ホテルで中華を食べるというイベントがあった。中華というといつも「炒飯&餃子」と決まっている自分もこの日ばかりは通常の5倍もの費用を掛けて昼食を取ることになった。もちろん自腹。中華料理店のテーブルは例によって、回転テーブルである。「この上の部分(回るところね)を卓袱(ちゃぶ)台の上に載せると豪華な卓袱台になるなあ」。せっかくの料理を目の前に、発想がどうもせこい。

 話は変わって、週末、「Robot-ism 1950-2000」というイベントを見て来た。マルチメディアの振興を目的とした団体のイベントである。展示品の中に「チャブロボ」というロボットというか(らしいのだが)、そんな展示物があった。機械仕掛けで動くそのロボは、ギアやチェーンはむき出しながら、顔や体の外装の大部分は人間らしい姿に覆われている。「たけしの誰でもピカソ」に出てくる感じのテイストに仕上がっている。ロボットは3体。お父さん、お母さん、それに男の子が卓袱台を囲み食事を取っている。そして、親父の横には作り物の一升瓶が置いてある。ここがシチュエーションをリアルにしている。

 見物人が集まったところで係員がボタンを押すと、親父の肩に取り付けられたパトライトがクルクルと点灯し始め、頭から湯気が吹き出す。しばらくするとギアがゆっくりとチェーンを巻き上げ、期待通りに親父ロボは卓袱台をひっくり返した。父権の復活を象徴する、その親父ロボの動き、特にパトライトが良い、に心の中で拍手をおくった。しかし、しばらくするとギアが逆転し始め、セットは元通りに復元されるが、単純なその巻き戻しに、ひっくり返された卓袱台の後片付けをする母親の悲哀とその後の親父の気まずさ、それに団欒を壊されて泣きじゃくる子供の姿まで再現されているような気がして来た。ロボットでそこまで表現することは素晴らしいことかもしれないがリアル感がかえって悲しみを誘い、長男の手を引いて、急いでその場所を離れた。

(秀)


第212話 〜2000/3/1〜

■電車の中で思うこと

 私が通勤で利用している常磐線はあまり行儀の良い電車ではない。夕方となると長距離通勤のおじさん達がビールやカップ酒を飲み始め、するめやチーかま(チーズかまぼこのことね)をかじったりしている。特に長距離用のボックスシートの車両となると、こんな人達が必ず各車両ごとにいる。上野始発、というのがピッタリの風景である。

 携帯電話に限らず、この他にも電車の中の困ったことはいろいろある。「何も朝から」と、言いたいほど、スポーツ新聞のHネタを熱心に読んでいるオヤジがいる。宅配のスポーツ新聞はHなページがないので、これは駅売りのものである。これが果たして痴漢を抑制しているのか助長しているのか分からないが、いざ濡れ衣となって捕まり、荷物を調べられ、こんなスポーツ新聞が出て来たら、しかもそのページが折り返しで開いていたら、反論のトーンも一気に萎えてしまう。これ以上の状況証拠はないだろう。夕方もタブロイド紙に同様のページがある。新聞を折り返して読んでいると、裏面もHなページだったりするので気を付けよう。こんな人は家族の手前、家に新聞を持ち帰るのが恥ずかしいのか、一気に読み終え、網棚に乗せたまま電車を下りていくことが多い。

 これは本で読んだのか、芝居かなんかの台詞だったか、「両手で(2個の)吊り革に掴まるような奴に、うちの娘はやらん」という台詞があった。目の前にそんな男がいて吐いている台詞ではなく、単に「こんな奴は嫌いだ。許せん」という例えで出て来たと思う。「両手で吊り革を持つような奴にろくな奴はおらん」、そんな感じだった。私はこの言葉が妙に気に入った。そして、電車の中で見掛ける「両手吊り革」の男達が許せなくなった。許せないからといって、後ろからこっそり、膝カックンをやりにいくわけではないが、見ててあれは格好悪い。だいたい、夕方・夜はくたびれたオヤジが掴まっているというか、両手でぶら下がっている。しかし、不思議なことに、朝見掛ける両手吊り革男は逆に元気で吊り革に掴まったまま、体を乗り出して窓の外を見たり、あたりを見回したりしている。あのエネルギーはいったいどこから来るのだろうか?。

(秀)


第213話 〜2000/3/2〜

■ものを買う心理

 ものを買いたいと思う欲望は、ずばり、「変身願望」である。一度に2本のクラブを振り回すことはないけれど、高いクラブ、良い(と言われている)クラブが欲しくなるのは、コレクターを除いて、そのクラブがあれば多少なりは上手くなりそうな気がするからに違いない。今までの自分とは違う自分への変身願望なのである。あなた方が欲しがる、服も指輪もバックも靴も、これらはもっと直接的かもしれない。ものを買いたくなるという心理は実に単純なのである。

 悲しいことにこれまでの私はまさにこのスタイルであった。「あのギタリストと同じあのギターを」。確かにそんな感じの音は出る。しかし、弾いている私は全然変身していない。「あの(カメラの)レンズを買えば、きっと作風が変わる(良い写真が撮れる)に違いない」、「あのパソコンは今持っているパソコンの2倍のパフォーマンスだ」、そんなことの繰り返しである。パソコンは毎年2倍にスピードアップしているらしい。しかし、こなせる仕事量は毎年あまり変わることがない。使っている側はそれほどのスピードで能力が向上するわけでない。所詮、給料が毎年2倍になるわけではないので、これで良いのかもしれない。

 しかし、買いたいという心理が実際の購買といった活動に結実するには幾つかのハードルがある。まず第一は、お金。これに尽きる。ただ、これは単にお金のあるなしにとどまらず、買い手の値ゴロ感というものがある。「10万円なら買わないが、5万円なら買いたい」というやつである。第二は入手の可否。流通数量が極端に少なく、入手自体が困難な場合も想定される。そして、第三に他の欲しいものの存在ということになるだろう。これは何も同じカテゴリーだとは限らない。PCのライバルは海外旅行かもしれないし、最大のライバルは「やっぱり何も買わない」という結果であろう。

 さて、みなさんは買い物が変身願望で、それが一時的な麻薬でしかないことに今回気が付いてしまった。これから先、買い物するときのトーンや快楽がこれまでよりもちょっと鈍るかもしれない。すまん。更なる変身願望を満たすために、買い物に変わる新たな麻薬を見つけることができるだろうか?。今後、コラムでおいおい考えていくとしよう。かく言う「秀コラム」も自分の変身願望の1つとして始めたような気がする。

(秀)


第214話 〜2000/3/3〜

■退職金

 巷で話題の新潟県警本部長と関東管区局長(監察官)の話である。今回の報道でいろいろと隠蔽していた事実が露出して来ているが、ようやく「退職金辞退」という情報を受け、世の多くの人は溜飲を下げたところであろう。しかし、実のところ、世論の多くは監禁されていた女性が救出された当日に本部長が出張で県警本部に戻らなかったことや県警が監禁事件について虚偽の発表を行ったことよりも、その出張が本来不祥事を監察すべき監察官の接待であったこと。その場で、図書券とは言いながらも掛け麻雀をしていたこと。監察官は接待を求め、最初から遊興目的、県警本部にいたのはわずか15分で本来の監察をサボっていたこと。これらにむしろ腹を立ててはいないだろうか?。さらに批判の対象は広がる。それぞれが辞職したが、これが懲戒による免職でないため、退職金が支払われるということである。最終的にこの事がダメ押しとなって世間が騒いでしまった。マスコミが退職金という庶民感情に訴えて、世論を扇動し、「退職金辞退」という結果をもたらした。

 不思議なことがいくつかある。なぜ今回の事件が明らかになったのだろうか?。善し悪しは別として、警察からこうも簡単に身内の秘密が流れるものだろうか?。不謹慎かもしれないが、警察はこの程度の秘密を何故隠し通せなかったのだろうか。よく最近の警察の不祥事で組織構造上の問題が指摘されている。キャリアとノンキャリアの問題である。今回の件は(も)ノンキャリアの職員がリークしたのではないかと、かんぐってしまう。警察とはそんな組織なのだろうか?。

 当初本人達は自ら辞職することで事態は収拾し、とりあえず退職金を手にして幕引きできると思ったに違いない。掛けに出たのだ。今回の処分は、管区局長が不処分、県警本部長が減給20%一ヶ月の懲戒であった。これに対しては「身内に甘すぎる」というのが大方の意見である。確かにそうだ。しかし、この中途半端な処分が辞職と退職金辞退という結果をもたらした。降格でも左遷でも行って、ほとぼりが冷めた頃に、ひっそり辞職するなり、定年を迎えられるようにした方が、本人達には温情のある処分だったと思う。ところで、今回の事件が果たして、それぞれにとって三千数百万円の金銭的価値に値するのだろうか?。30数年間にわたる(であろう)、これまでの勤務が全否定されたわけである。一万円の図書券どころか、一夜にして二人はあわせて七千万円をすってしまったわけだ。債務超過に陥れながら、退職金を返還しない、一部の金融機関の経営陣よりも、よほど潔いと思ったりする。他人の幸福をねたんだり、他人の不幸を喜ぶことは最も悲しく、恥ずべきことであることをマスコミも世論も忘れてしまっていることがとても悲しい。

(秀)


第215話 〜2000/3/6〜

■ヒデバーガー

 勢いでプレステ2を予約してしまった。顧客情報漏れで騒ぎになった、プレイステーション・ドット・コムでである。私の情報は漏洩していなかったと、メールが来たのでちょっと一安心である。勢いと言うものの若干の迷いがあったため、発売日当日というわけにはいかず、今週末に納品される予定である。私はあまりゲームをやらない。もし、私がゲーマーだったり、酒好きだったら、連日のコラム執筆など不可能な話だ。それでもプレステ2を予約してしまったのは、DVDプレーヤーとしての用途と、来るべき情報家電の中枢となって、インターネット端末となる点を評価してのことである。噂では電話回線だけでなく、ケーブルテレビへの接続でインターネットが楽しめるようになるらしい。

 御多分に漏れず、プレステ1を持っているが、あまりゲームをしないため、ソフトもほとんど持っていない。もちろん、話題のシリーズもののゲームなどもない。私が買ったのは「仮面ライダー」と「バーガーバーガー」ぐらいだ。「バーガーバーガー」とはハンバーガーチェーンショップの経営シミュレーションゲームである。バーガーチェーンのオーナーとなって、新製品を開発したり、出店計画を練って、店舗を100店舗まで拡大させる内容となっている。単に私がハンバーガー好きであるのと、経営シュミレーションゲームに興味があって購入した。我が「ヒデバーガー」は堅実な商品ラインナップで、着実に成長を続け、参入からわずか一年半足らず(ゲームの中での時間経過)で、ライバルの「M」や「L」やらの看板を掲げたショップを駆逐し、地図上の店舗を全て「ヒデバーガー」一色で独占した。

 その後、ライバルが二度と戦いを挑んで来ることはなく、独占のまま店舗拡大は順調に推移し、三年を待たずに、店舗数100店を達成し、ゲームは終了した。ゲーマーの多くはこのエンディングロールを見ながら感じる達成感にはまってしまっているんだろうな、などと思い、直前に保存したメモリーから同じシチュエーションを何度か呼び出し、その達成感を繰り返して味わったりした。さて、皆さんの周りに「H」の看板を掲げたバーガーショップが現れたら、要チェックだ。「ヒデバーガー」じゃないか覗いてごらん。

(秀)


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