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第236話 〜2000/4/5〜

■偽物の神話

 いつかこのコラムで書きたいな、というテーマに「何故、人はブランドに弱いのか?」というのがある。あいにくその結論を出すにはまだ至っていないが、それに関する話題について今回は書きたいと思う。なお、本稿の「PRADA」バッグに関わる情報源は「週刊宝島」4月5日号(もう、売っていない)である。かなりショッキングな話だ(私個人には全く影響のない話であるが)。世の中の「PRADA」のバッグの約70%が偽物と紹介されていた。「PRADA」は生地にプリントが施されているわけでないので、偽物も作り易いらしい。

 もし、この70%という数値が本当であれば、3個のうち2個は偽物ということになる。路上で販売しているものが明らかに偽物であるのを除いても、本物と信じて買った中に相当の偽物が存在していることになる。本物と同等の金額を払って偽物を掴まされているわけだ。具体的な判別のポイントは紹介されていなかったが、大量に在庫している店や修理を独自に受け付けている(正規の修理ルートに持ち込まれると偽物とばれてしまうから)ようなところはヤバイらしい。そして、在庫品をそれぞれ比較して、プレートやハトメのデザインに異なる点がある場合はどちらかが(両方かもしれないが)偽物と思われる。偽物の中にはショップのバイヤーでさえ、判断ができないもののあるらしい。ロゴプレートに微妙なデザインの違いがあっても、「ロットの違いによるもの」と店員に説明されれば、あこがれのブランドバッグを前に納得してしまいそうだが気を付けて欲しい。もし偽物と知って販売していれば罪になるが、もし偽物でもそれを偽物と知らずに(知っていても知らない振りして)販売している限りは罪にならないそうだ。

 香港などの路上でRolexの偽物時計が売られているが、その店主に「ここにあるのは全部偽物だろう?」と聞くと、「いや、これは本物だ」と、自分の付けている時計を見せたそうだ。自分が扱っている偽物時計があまりにも良く出来ているので、自分が騙されないように、ものさしとして、自分は本物を身に付けているらしい。さあ、皆さんも自分が持っているバッグなどを調べてみよう。「なに?『PRARA』って書いてあるって?。ラッキー。それは一安心。それは『PRARA』の本物に間違いない」。

(秀)


第237話 〜2000/4/6〜

■もみ消し

 ちょっとタイミングを逸した感もあるが、今回は交通違反もみ消し事件について語りたい。最初あの事件が報道されたとき、折りしも新潟県警であったため、「また、新潟県警か」と思う一方、犯罪であるのはもちろんだが、こんなことでも逮捕者が出るというところで、新任の県警本部長が綱紀粛正ぶりを広く世間にアピールするためのパフォーマンスにも見えた。今回の逮捕劇は「交通違反をもみ消してもらったという話を聞いた」という住民からのたれこみに始まったらしい。

 とまあ、ここまでが一般に報道されている範囲での話である。しかし、「何故、あの議員が狙われたのか?」という部分では、「連立内閣を批判していたため、さされた」と伝える週刊誌もあった。元国家公安委員長とインパクトもこの上ない(逮捕されたのは私設秘書であるが)。一方、「週刊ポスト」では、今回の逮捕劇は国会議員への警察の反抗と見るべき記事が掲載されていた。例のカラ監察事件をはじめ、ストーカー事件や「てるくはのる」事件での失態、さらには警察官の様々な不祥事が国会で追求され、これに対する改善策が討議されているが、今回のもみ消し事件で逮捕者が出た途端に、そのトーンが鈍ってしまった。これに対しポスト誌は、「これ以上追求すると、そちらにも被害者が出ますよ」と、警察サイドが議員達に圧力を掛ける策だった、と説明する。

 ある週刊誌では「これで逮捕していたら、警察官は十分の一、国会議員は一人もいなくなる」と揶揄している。交通違反のもみ消しが一般的に行われているであろうと、誰もが思っている。私も「親が警察職員で、学生のときにもみ消して貰ったよ」という人を直接知っている。この他にも巷にはいろいろと噂がある。「ピーポくん(警視庁のマスコット)のアクセサリーを付けていると警察関係だと思って見逃してくれる」、「人命救助などで表彰された人は見逃して貰える」など。テレビのドキュメント番組で「警察24時」みたいなものをよくやっているが、あの中でこんなシーンが必ず出てくる。「お巡りさん、堪忍したってな」。飲酒検問に引っかかった運転手が警官に頼み込んでいる。「堪忍してくれ言われて、堪忍してたら警察はいらん!」と警官が返しているが、あの警官も一片の曇りもなく、そう答えているかは疑わしい。

(秀)


第238話 〜2000/4/7〜

■ウルトラマンのサイン

 もう一昨年前の話になるが、亀有駅を中心としたJR主催のスタンプラリーが行われた。その名の通り、「こちら葛飾区 亀有公園前派出所」をモチーフに、土日の2日間にわたって、沿線の派出所を訪ねてスタンプを集めるものだった。スタートはもちろん、亀有駅である。数日前から沿線の駅に貼り出されたポスターには「両さんも来るよ」という感じのことが書かれていた。

 当日、亀有駅に降り立つといたいけな子供達とその保護者達で早くも行列が出来ていた。肝心の両さんであるが、予想通り偽物だった。何が本物か?という疑問は当然であろうが、その両さんはあまりにも偽物過ぎた。彼もきっとJRの職員なのだろう。どういう基準で選ばれたかは分からない。髪が丸刈りだったというだけかもしれない。眉は墨で繋げられ、足はトイレ用の下駄、要はアニメでいつも彼が履いているそれであるが、妙に新しい。服装もJRの制服のようだ。彼は完全に浮いていた。出発する子供達に握手で激励しようとしているが、誰も手を出さない。しようがないので、小さい子には頭を撫でるようになったが、うちの子供などはそれから逃れ、私の後ろに隠れた。「ほら、両さんだよ」と言うと、「だって、にせものだもん」と答える。

 今回は明らかな偽物であったが、被りモノなら、本物も偽物もないだろう。ミッキーマウスはどうだ。仮面ライダーは?。しかし、被りモノにも偽物はあった。いや、偽物ばかりである。私が小学二年生の時の話になる。スーパーの子供向けイベントでウルトラマンショーが行われた。特に怪獣と戦うようなショーではなく、店内を練り歩いた後にサイン会が行われた。この日現れたのは、セブン、タロウ、新マン(Jack)だったと思う。三人が席に座ると(この絵も想像すると面白い)、それぞれに列が出来てサイン会が始まった。料金は300円。もちろん、私もその列に並び、念願のサインを手にした。親切なことにサインは3つ書いてあった。三人とも他の二人分のサインまで書いてくれるのである。そのときは得した気分でうれしかった。

 しかし、他人のサインまで書いてしまうのは、彼らが兄弟であってもおかしい。所詮、中に入っている者からすれば、自分のサインでもないし。きっと、あの得体の知れないウルトラサインを相当練習をしたことだろう。例え騙されてもその代金以上に笑ったし、こうしてコラムのネタにもさせてもらったので満足。

(秀)


第239話 〜2000/4/10〜

■セルフスタンド

 たまに、そう、年に数えるほどしか利用しないそのガソリンスタンドが、いつの間にかセルフ方式に改装されていた。それ以前に洗車がセルフ&ドライブスルー方式の60秒洗車で、しかも料金も安いとあって、ガソリンは入れなくても洗車だけには利用していた。自分で拭き上げるにしても水洗い200円、ワックス洗車400円は魅力である(最初はそれぞれ、100円、200円だった)。洗車場ではこの倍は掛かってしまう。乗ったまま、じっと我慢の60秒。数台並んでいても、それほど苦にはならない。

 そしてついに、このスタンドは洗車だけでなく、給油もセルフ方式になってしまった。消防法の改正でセルフスタンドが可能なことは、学生時代にバイトをしていたこともあり、知ってはいたが実物に遭遇したのは初めてのことだ。仕組はこんな感じである。指定位置に車を止め、給油口を開いて車を降りる。給油口のキャップを開け、給油機の3本のノズルから給油するノズルを選び、ボタンを押す。カウンタがリセットされたのを確認して、ノズルを給油機から取り外し、車の給油口に入れ、ノズルのレバーを握れば給油が開始される。3本のノズルとはハイオク、レギュラー、軽油の3本である。ノズルを取り外す前に、数量の指定(例えば20リッター)や金額の指定も可能だ。

 文字で書いてしまえばこれだけであるが、かつてバイトをしていて、その約二年半の間に通算150キロリッターは給油したであろう私でも、セルフスタンドは初めてのため、その操作の順番で迷ってしまった。改装後間もないため、各給油機に人が張り付いていて、丁寧に操作を教えてくれる。給油が終わると事務所の方で会計を済ませることになっている。セルフ方式だからか改装セールのせいなのか、値段は5円/リッターは安かったが、こんな感じで人を配置しておくぐらいならその人達が給油した方が断然効率的だ。こう人が配置できるのも、ここしばらくのことだろうが。

 しかし、セルフスタンドのメリットは何であろうか?。給油機1台に対し、ノズル数が3本と増えることからすれば設備の面では明らかにコスト高に間違いない。給油時間も長くなるため、回転率は悪くなる。頼みの綱は人件費の圧縮ということだが、安さのために人を削って、安全性が犠牲になってしまっては元も子もない。くわえタバコで給油をする人が現れやしないかと心配で仕方がない。こんな人は注意してもなかなか聞いてくれる人でない場合が多いが、引火しようものなら、被害はその人だけにとどまらない。そんなときは逃げるしかない。油を売っている暇などない。

(秀)


第240話 〜2000/4/11〜

■カンヅメ

 当コラムも執筆開始から1周年を迎えるに至った。「いつかは本に...」という願いは思いのほか、早期に達せられる見通しとなり、ご同慶の至りである。ところが、その入稿が遅れている。何も新たに書き下ろす必要はないのだが、今となって読み返してみると、誤変換や脱字が見つかるし、言葉足らずなところや、変な言い回しのところを書き直してみたくなる。そして、挙げ句には一読者となり読みふけってしまう始末。何しろ、文量が多すぎる。毎日の執筆に加えての、この校正は結構大変なことだ。

 まとまった時間に一気呵成に片付けてしまうのが良いのだろうが、休日に部屋に閉じこもっていては「秘密」がばれてしまう。ここのところ、週末は小学校の雑用(PTAのことね)などで、世間的に良い人として時間を消耗してしまっている。こうなればいっそのことカンヅメになるのが良いかもしれない。作家先生方が締切間際に出版社にさらわれ、旅館やホテルに閉じこめられた上、仕事が上がるまで帰してもらえない、アレである。される側はどんなもんだろうか?。なんかプロっぽくてあこがれてしまう。しなびた旅館が良いか。いや、移動時間も惜しいので、東京駅のステーションホテルというのが通勤途中でもあり、絶好のポジションである。そして、もう1つの候補はお茶の水にある、山の上ホテル。カンヅメ旅館としては有名どころである。かと言って、会社をサボって(家族には出張と偽って)、自費で投宿し、自らカンヅメになるほどの甲斐性はあいにく持ち合わせていない。せめては会社帰りに、東京駅かお茶の水駅近くの喫茶店でノートPCを持ち込み、それとなく気分に浸るのが精一杯であろう。「いつかは『山の上ホテル』」。本を出した次の目標はこれにしよう。

 本には欲張ってこの240話までの全作品を載せようと思う。できれば、それに簡単な書下ろしも付けて。縦書き右開きにし、行間も空いているため、PCの画面で読むよりは格別に読み易いはずだ。場所を問わずに読めるのが何よりうれしい。リリースは最短で1ヶ月後ぐらいになりそうだ。これ以上、ズルズルと遅れないように今週中には入稿しよう。しかし、今日の電車はカンヅメどころか、すし詰め状態でまいったなあ。

(秀)


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